お掘りの色

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パレットの上で、深緑を作っていた。

小学校の写生大会。
タワーのある公園。

鉛筆で下書きをして、時間いっぱい色を塗って
図工の時間に仕上げていく。

タワーの足元。 
画用紙の下半分に大きく広げたお堀の下書きに、 
深く、きれいな、深緑。

色を作って画用紙に落とし、 
筆に水をつけて、広げていく。 

足りなくなっては作り、 
足りなくなってはまた作る。

同じ色を作ろうとしても、
作る度に違う色ができる。

あきらめて塗ってみると、

重なって、むらになる。
深さが出る。

記憶のままのお堀が見えてくる。

少しぼやけ始めた記憶が
「ああ、こうだった。」と、見えてくる。

水面も、その奥も、
記憶の中の深緑を辿って塗っていく。

担任の先生が机の間を歩きながら、
足を止めて、言った。

「いい色だな。」

その瞬間は、
先生の言葉の意味がわからなかった。

先生は振り返り、教室に向かって
「お堀の水は、水色だったか。」と声をかけた。

周りを見た。
みんな、水色のチューブから出した水色を塗っていた。

「私だけ違う。」

水色は、水の色だから水色というのか。
みんなは、水だから水色を塗るのか。

みんなは知っていて、
私は気づいていなかった。

「いい色だな。」
先生の言葉が戻ってきた。

画用紙の中のお掘りの色は、
見てきた色そのままだった。

「ああ、大丈夫。私。」

少しだけ周りを見て、
また塗り始めた。

廊下に貼り出された写生大会の絵の中で、
私のお堀はみんなと違っていたけれど、
見てきた景色と重なった。

緑、青、黒をベースに、混ぜた色は何色だったのか。

あの時作った深緑は
もう再現できないけれど、
あの時のあの色を、今でも覚えている。